真鍮の熱伝導率とは?数値・他金属との比較・用途判断まで完全解説
機械部品や電気部品の材料選定において、真鍮の熱伝導率は見落とされがちな重要指標です。
「真鍮は熱をよく伝えるのか」「銅やアルミと比べてどの程度なのか」「放熱用途に使って問題ないのか」
こうした疑問に対し、本記事では数値データ・規格情報・実務での使われ方を基に、判断に必要な情報を体系的に整理します。
真鍮の熱伝導率の基礎知識
熱伝導率とは、材料がどれだけ効率よく熱を伝えるかを示す物性値で、単位はW/mK(ワット毎メートル・ケルビン)です。
この数値が高いほど、熱は速く広範囲に拡散します。
真鍮(黄銅)は銅と亜鉛の合金であり、配合比率によって物性が変化します。
そのため、熱伝導率も単一値ではなく、材質記号や成分によって幅があります。
真鍮の代表的な熱伝導率の数値
| 材質 | 熱伝導率(W/mK) | 備考 |
|---|---|---|
| C3604(快削黄銅) | 約110 | 切削性重視 |
| C2801(6:4黄銅) | 約120 | 板材・プレス用途 |
| C2680(黄銅) | 約115 | 汎用材 |
JISに基づく材料区分や物性定義については、JIS規格で解説されています。
他の金属との熱伝導率比較
真鍮の熱伝導率を正しく理解するためには、他金属との比較が不可欠です。
以下は代表的な金属材料との比較表です。
| 材料 | 熱伝導率(W/mK) | 特徴 |
|---|---|---|
| 銅 | 約390 | 非常に高い放熱性 |
| アルミニウム | 約230 | 軽量・放熱用途多数 |
| 真鍮 | 約100〜120 | 加工性と耐食性のバランス |
| 鉄(SS400) | 約50 | 強度重視 |
| ステンレス | 約15 | 耐食性重視 |
この比較から、真鍮は「中程度の熱伝導率」に位置することが分かります。
銅やアルミほどではないものの、鉄やステンレスよりは明確に熱を伝えます。
なぜ真鍮は銅より熱伝導率が低いのか
真鍮は銅に亜鉛を添加した合金であり、合金化によって自由電子の移動が阻害されます。
これにより、純銅と比較すると熱伝導率は大きく低下します。
一方で、機械加工性・耐摩耗性・耐食性が向上するため、総合性能としては実務向きの材料となります。
真鍮の熱伝導率が活きる用途・活きない用途
真鍮が適している用途
- バルブ・継手などの流体部品
- 電気端子・接点部品
- 摺動部を伴う機械部品
- 装飾性と機能性を両立した部品
これらの用途では、高すぎない熱伝導率がむしろ有利に働きます。
急激な熱拡散を抑えつつ、局所的な温度上昇を防ぐバランスが取れているためです。
真鍮が不向きな用途
- ヒートシンクなど放熱専用部品
- 高出力電子機器の冷却部
- 熱交換効率が最優先される用途
これらのケースでは、アルミや銅の方が明確に優位です。
放熱設計を前提とした場合、真鍮は「加工しやすいが効率は劣る」材料と認識すべきです。
真鍮の熱伝導率と加工・設計上の注意点
切削加工時の発熱との関係
真鍮は切削性が非常に高く、加工熱が工具側に集中しにくい特徴があります。
これは、熱伝導率が中程度であることが影響しています。
温度変化による寸法変化
熱伝導率と合わせて考慮すべきなのが線膨張係数です。
真鍮はアルミほど膨張せず、鉄よりは大きく膨張します。
そのため、温度変化がある環境では公差設計が重要になります。
精密部品では、熱伝導率だけでなく、膨張特性を含めた総合判断が不可欠です。
真鍮の熱伝導率に関するよくある誤解
「真鍮は熱をよく伝える金属」という誤解
銅色の外観から「銅に近い性能」と誤解されがちですが、実際には大きな差があります。
熱設計では必ず数値で判断する必要があります。
「放熱部品にも問題なく使える」という誤解
低〜中出力であれば成立する場合もありますが、
高出力・連続発熱条件では性能不足になるケースが多く、注意が必要です。
よくある質問
まとめ:真鍮の熱伝導率は「中間性能」を理解して使う
真鍮の熱伝導率は約100〜120W/mKであり、
銅やアルミには及ばないものの、鉄やステンレスよりは優れています。
その特性は、加工性・耐食性・強度とのバランスに優れ、
「放熱専用ではないが、熱を無視できない部品」に最適です。
材料選定で迷った場合は、熱伝導率単体ではなく、
使用環境・加工方法・コストを含めた総合判断が重要となります。